こんにちは。セールスコピーライティング普及協会、認定ライターの石井です。
「1日たった5分で」「飲むだけで」「ワンクリックで」……。
世の中の広告を見渡すと、「すぐに」「簡単に」といったことを訴求する魅力的な言葉を目にすることがあります。
これは、「クイック&イージー」というコピーライティングのテクニックの1つで、見込み客の興味を惹きつける強力なフックになります。
一方で、安易にクイック&イージーを使用して、見込み客の心に響かない言葉になっている広告やプレゼンもよく見ます。
特に高単価商品については、安易なクイック&イージーは成約率を逆に落とすことになりかねません。
そこで、今回はクイック&イージーの落とし穴と、正しく顧客の背中を押すための適切な伝え方について解説します。
クイック&イージーとは?

クイック&イージーのテクニックは、長年セールスコピーライティングの世界で使われています。
- Quick(すぐに): 時間がかからず、即効性があること
- Easy(簡単に): 努力や苦労がいらず、簡単にできること
例えば、次のようなキャッチコピーです。
- スプレーして流すだけ。こすらず落とせるお風呂掃除
- デザイン経験不要。テンプレートを選ぶだけでプロ級のチラシが完成
- スマホから5分で口座開設
人間は、本能的に楽をしたい生き物で、基本的に努力したくないし、時間をかけたくないし、面倒なことをやりたくありません。
上記のように、クイック&イージーで心理的ハードルを取り除いたうえで、解決策(効果効能)を示すと読み手の興味関心を惹きつけることができます。
逆に、「なんか難しそう」「自分には無理」「忙しくて時間はない」と思われたら、その時点で離脱されます。
クイック&イージーの詳細は、以下の記事をご覧ください。
クイック&イージー3つの大きな落とし穴

クイック&イージーは、セールスの場面では、常に意識しておきたい考え方です。
しかし、クイック&イージーは強力な訴求力を持つ一方で、次のような落とし穴がある点に注意しましょう。
景品表示法に抵触する可能性がある
まず、クイック&イージーを過度に訴求してしまうと、景品表示法などの法規制に抵触する可能性があります。
クイック&イージーといえば、「たった〇〇だけ」という文言が多いですが、合理的根拠がなければ虚偽・誇大広告と判断される可能性があります。

エステーの「Morilabo」という商品には、上図のように「寝室に置くだけで花粉を香りでガード」というコピーがありました。
しかし、実際に効果を証明できるのは、500mlのペットボトル程度の容量までで、普通の部屋では証明できないとして、景品表示法違反と判断されました。

お風呂用防カビ剤としてお馴染みのファブリーズについても、「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」というのが、合理的根拠がないとして景品表示法違反になっています。
もちろんクイック&イージーがすべて違法というわけではありませんが、事実と異なる場合、景品表示法違反のリスクがあります。
なお、健康食品や化粧品、美容・健康グッズなどについては、薬機法違反にも注意しなければいけません。
詳細は、以下の記事をご覧ください。

他力本願な質の低い顧客層が集まる可能性がある
クイック&イージーをあまり使用しすぎると、顧客の質を下げる可能性があります。
繰り返しますが、クイック&イージーで伝えたことが本当のことで、顧客の感想などで再現性が確認できるものであれば問題ありません。
ただ、「すぐに」「簡単に」は、努力しなくても一瞬で現状を変えてくれる魔法の杖と誤解する人もいます。
つまり、言葉は悪いですが、情弱やセミナージプシー、ノウハウコレクターといった依存体質の人が集まりやすくなります。
このような人に、高単価のバックエンド商品を販売しようとしても成約するのが難しいです。
仮に成約したとしても、他力本願なところが強いので、成果を出すことが難しいでしょう。
成功事例が生まれるどころか、行動せずに「買ったのに成果が出ない」といったクレームが増えて、悪評が広がりかねません。
顧客の質を下げないようにするには、「どんな人に買ってほしいか」「今までどんな人に売れていたか」という明確なターゲット設定が必須です。
理想の顧客層にとってのベネフィットは何か、ということを前提としてクイック&イージーを使うようにしましょう。
「本当にできるの?」と怪しまれる
ここ数年、見込み客の目が肥えてきて、商品・サービスの購入に慎重になってきている傾向があります。
つまり、過度なクイック&イージーのアピールは、見込み客に「怪しくないか」「裏があるのではないか」という疑念を抱かせます。
特に、まったく知らない人から「たった〇〇だけで!」「1日〇分で!」なんて言われると、「怪しいなあ」と警戒されても仕方ありません。
そのため、クイック&イージーを謳うのであれば、なぜ「すぐに」「簡単に」なのかといった理由をセットで伝えることが大切です。
理想の顧客層を高単価商品の成約に繋げるクイック&イージーの伝え方

クイック&イージーは、興味関心を惹きつける強力なフックとなる一方で、法律に抵触したり逆効果になったりするリスクがあります。
しかし、皆様が扱っている優れた商品・サービスは、遠回りすることなく成果が出るようになっていることも事実です。
誠実なビジネスをしている人にとっては、クイック&イージーは強力な味方になります。
次のように、正しくクイック&イージーを伝えるようにしましょう。
理想の顧客層を対象としたクイック&イージーに言い換える
クイック&イージーのような、一見強い訴求でも、理想の顧客層に刺さるものでなければ意味がありません。
むしろ、質の低い顧客層を呼び込んでしまうリスクもあります。
例えば、コピーライティング講座を例に挙げてみます。
前者は、勉強してスキルを身に付ける気のない人が集まる可能性があります。
一方、後者は、正しい努力で効率的にスキルが身に付くことが伝わるものの、まったく勉強する気がない人には訴求していません。
次に、ダイエットコーチの場合を例にしてみます。
これも前者と後者でまったくニュアンスが違います。
前者は、とにかく「楽に痩せたい」という人が集まってきますし、そもそも景品表示法違反の恐れがあるコピーです。
後者であれば、無理のない方法で堅実にダイエットできることは伝わりますが、楽をして痩せるとは言っていません。
このように、楽をして結果がほしい依存的な人を呼びたいのか、正しく効率的に成果を出したいという人を呼びたいのかによって、コピーは大きく変わります。
「なぜ早いのか?」「簡単なのか?」の根拠を必ずセットにする
ただ単に「すぐに結果が出る」「簡単にできる」と主張するだけでは、説得力がなく、むしろ「怪しい」と思われます。
必ず、「なぜクイック&イージーが可能なのか」という理由をセットで伝える必要があります。
例えば、高機能な電気圧力鍋を販売する際に「簡単な操作で美味しい料理が作れます!」と見込み客に伝えるとします。
しかし、これだけでは本当に簡単なのか、どう簡単なのかがわかりません。
と、写真や動画付きで解説して、初めて説得力が生まれます。
このように、クイック&イージーを伝えたら、必ず理由やメカニズムも伝えましょう。
見込み客の常識や固定概念、思い込みを覆す表現に言い換える
クイック&イージーは、「すぐに」「簡単に」達成できる効果効能を訴求するだけでなく、見込み客の常識や固定概念、思い込みを覆すことにも役立ちます。
つまり、見込み客の常識を破壊したり、衝撃的な事実を示したりしてパラダイムシフトを起こすことができます。
多くの人は、努力したくない、時間をかけたくないと思いながら、「成果を出すには、苦しい努力が必要だ」という思い込みに囚われています。
思い込みを外したり、誤解を解いたりすることで、「だったら自分でもできるかも」と感じてもらえるでしょう。
例えば、次のようなものです。
このように、「こんなことしなくていいんだ」「やり方が間違っていただけなのか」ということを伝えるのも、見込み客にインパクトを与えます。
常識破壊については、以下の記事をご覧ください。

【まとめ】安易なクイック&イージーにはまらないために
クイック&イージーは、わかりやすく見込み客に興味関心を惹きつけるための強力な武器になります。
ただ、安易にクイック&イージーを意識したコピーを作っても、見込み客に刺さらないばかりか逆効果になることがあります。
また、クイック&イージーが本当のことでなく、再現性も確認できないなら景品表示法違反の恐れもあります。
誇大広告を避けることは当然として、見込み客に寄り添って、説得力のあるクイック&イージーを意識するようにしましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。


