こんにちは。
セールスコピーライティング普及協会認定ライターの中岡です。
以前お届けしたコラムで、「返報性」「一貫性」「希少性」「権威性」「社会的証明」の5つの心理的要素を組み込むことで、成約率が爆発的に上がるとお伝えしました。

今回は5つの中のひとつ、一貫性について詳しくお話します。
私は週刊少年ジャンプを、中学生の頃から社会人になるまで欠かさず購入していました。
また、好きなアーティストのCDやDVDが発売されたら、中身を一切確認せず購入した時期がありました。
雑誌やアーティストは違えど、このような行動をされたことが一度はあるかと思います。
なぜこのような行動を取るのかというと、人間には自身が一貫した行動を取りたい、また他人からそう見られたい、という一貫性の心理が備わっているため。
この心理の根底は、選択機会の削減と虚栄心によるものであり、セールステクニックとしても応用されています。
そこで今回は、一貫性の法則で買わざるを得ない状況を自然に作り出す方法をお伝えします。
一貫性の法則とは

人間は自分を裏切りたくないという、自分の言動に一貫性を持たせたい根源的な欲求を持っています。
たとえば、このような経験はありませんか?
「今日からジム通いする!」と友達に宣言したら、億劫でも行かざるを得なくなった
「この商品、いいですね」と販売員に話したら、なんとなく買わないと気が済まなくなった
一貫性とは、自分の言動や決断に一貫性を持たせたいという根源的な心理的欲求に基づく行動原理。
シンプルに言えば、「一度言ったことや決めたことは、その後も貫こうとする」人間の自然な行動心理です。
私達は社会的生物として「首尾一貫している人」を信頼し、逆に「言動がコロコロ変わる人」を信用しない傾向があります。
そのため、自分自身に対して、また他者から「一貫した人間」と見られたいという強い欲求を持つのです。
この一貫性が最も強く働くのは、以下の3つの条件が揃ったときと言われてます。
- 自発的な意思表示であること:「どう思いますか?」と質問され「良いですね」と自ら答えた場合など、強制ではなく自ら選んだと感じた時。
- 公の場での表明であること:他者の前で「実践します!」などといった発言や決断をして、宣言を覆すことへの心理的抵抗が大きい時。
- 明確な努力が伴うこと:申込書を自筆で書いたり、少額でも前払いをして、時間や労力、お金などのコストを払った決断を行った時。
一貫性の法則は、単なる心理トリックではなく、人間の意思決定プロセスの根幹に関わる重要な心理メカニズムです。
適切に活用すれば、押し売り感なく、自然な流れで顧客の購買決断を促進することができます。
「影響力の武器」の著者も効果を実証

世界でベストセラーとなったビジネス書「影響力の武器」の著者であり、社会心理学の専門家として有名なロバート・チャルディーニ博士。
本書において、ロバート博士は、事前に相手のコミットメントを取り付け、一貫した態度を取らせれば、最終的に承諾を引き出しやすくなると説いています。
以下の一貫性に関する実験を行った結果、活用するかしないかで、大きく成約率向上が変わったことも確認されています。
【ロバート博士による代表的な実験】
・小さな要求実験: 最初に小さなお願いや協力を受け入れた人は、後の大きなお願いや協力を受け入れる確率が著しく高くなった
・公約の効果実験: ある問題に対する自分の立場を書面で表明した人は、その立場に沿った行動を取る確率が大幅に上昇した
・自己イメージ実験: 「あなたは協力的な人ですね」と他人から言われた人は、その後の協力要請に応じる確率が高まった
一貫性の法則は、単なるトリックではなく、人間の基本的な心理メカニズムに基づいているため、文化や年代の影響を受けず機能するもの。
安価な商品は「衝動買い」や「とりあえず試す」という購買行動がありますが、高額商品は慎重に選択した上で購入行動に踏み切るため、一貫性の効果を発揮しやすくなります。
そのため、セールスにおいて一貫性を構築しておくことは、高額商品の成約率向上に繋がるのです。
セールスで活かせる5つの一貫性

本項目では高額商品のセールスに活用できる5つの一貫性について、お伝えします。
フットインザドア
フットインザドアは「ドアに足を入れる」という意味で、最初は小さな要求からスタートし、徐々に大きな要求へと段階的に上げていく手法。
このテクニックは「段階的コミットメント」とも呼ばれ、販売プロセスを複数のステップに分けることで、心理的な抵抗感をの低減も実現できるのです。
最初の要求は受け入れやすく設定し、各ステップで適切な時間間隔を置きながら、徐々に要求のハードルを上げていくとより効果的が見込めます。
たとえば無料レポートの提供から始め、その感想を聞き、無料セミナーへの参加を促し、最終的には有料コンサルティングへと導く…といったプロセスはフットインザドアを利用したもの。
フットインザドアで重要なのはとにかく、次のステップへ進むために「自然な流れ」を作ることなのです。
<フットインザドアを効果的に実践するためのポイント>
・最初の要求は受け入れやすく、ほとんどの人が「イエス」と言える程度に設定する・要求は必ず見込み客にメリットがある内容にし、時間稼ぎと感じさせない
・各ステップの間には適切な時間間隔を置く(すぐに大きな要求に移行しない)
・各ステップで相手の自発的な行動を促す質問や仕掛けを組み込む
ラベリング
ラベリングとは、人に特定の特性や性質を帰属させ、その特性に一致する行動を促すテクニックです。
人は「自分がどのような人間か」というアイデンティティと、一致する行動を取りたいと強く願う生き物。
何かしらのラベル付けをすることで、そのラベルに合致するように行動する強い動機が生まれます。
たとえばセールスの場で見込み客に「先見の明がありますね」と話した後、まだ世の中に存在しない革新的なサービスを提案されると、断りにくくなるのは、ラベリングによるものです。
効果的なラベリングを行うには、相手の価値観や自己イメージを理解し、相手が「そうありたい」と思うポジティブな特性を特定して、それをさりげなく伝えることが大切です。
<ラベリングを効果的に実践するためのポイント>
・見込み客の価値観や自己イメージを事前調査や会話の中から理解する・相手が「そうありたい!」と思うポジティブな特性を特定する
・「あなたは○○な方ですね」とその特性をさりげなく伝え、そのラベルと一致したサービスを提案する
スナップバック
スナップバック効果(ドアインザフェイス)は、最初に受け入れられそうにない大きな要求をして断られた後、本当の目的である小さな要求をすることで承諾率を高める手法です。
跳ね返り効果とも呼ばれ、フットインザドアの逆のイメージです。
最初の大きな要求から小さな要求への移行は、相手に「譲歩してもらった」という感覚を与え、お返しとして譲歩したくなる心理が働きます。
たとえば「フルサービス(500万円)はいかがでしょうか?」と提案し、断られた後に「難しければライトプラン(250万円)もございます」と提案する方法が該当します。
効果を最大化するためには、最初の要求は非現実的ではなく、受け入れにくいが検討の余地があるレベルに設定。
そして、最初の要求が断られた直後に2つ目の関連性ある要求をすること。
この手法は短期間での決断が必要な場面や予算に関する交渉、オプション販売などで特に効果を発揮するのです。
<スナップバック効果をを効果的に実践するためのポイント>
・最初の要求は受け入れにくいが検討の余地がある内容を設定・2つの要求の間に明確な関連性を持たせる(全く無関係だと効果が薄れるため)
・最初の要求が断られた直後に2つ目の要求をする
・「それでは、もっと小さな提案として…」と譲歩したことを明示的に伝える
社会的証明との組み合わせ
社会的証明と一貫性の法則を組み合わせる手法は、他者の選択という外部要因と、自分の一貫性という内部要因を同時に活用する強力なアプローチ。
人は不確実な状況では他者の行動を参考にする傾向があり、さらに自分の立場や意見との一貫性を保ちたいという欲求も持っています。
たとえば「同業界の経営者100名が既にこのセミナーで成果を出しています。あなたも彼らのように先見の明を持った決断をされる経営者ですね?」というアプローチはこれに該当します。
効果を最大化するためには、できるだけ見込み客と似た属性を持つ人の例を出し、具体的な数字や実名の事例を挙げ、社会的証明の後に相手の特性や価値観に訴えかけること。
この組み合わせが特に効果的な理由は、「みんなが選んでいる」という安心感と「自分もそうありたい」という願望が重なるからです。
具体的な数値、権威ある人物からの推薦、相手と似た立場の人の選択、詳細な成功体験など、様々な形の社会的証明を活用できます。
<社会的証明との併用を効果的に実践するためのポイント>
・業種・規模・地域などできるだけ見込み客と似た属性を持つ人の例を出す・具体的な数字や実名の事例を挙げる
・成功事例の詳細や具体的な成果を伝える
文字化・署名の活用
文字化・署名の活用は、口頭での約束や意思表示を形に残すことで、一貫性の効果を劇的に高める手法です。
以下の理由から、口頭での約束より書面化された約束の方が、守られる確率が大幅に高い傾向にあります。
- 書くという物理的な行動が伴うことで記憶に強く残る
- 目に見える形で残るため、後から言っていないと否定されにくい
- 自分の名前や署名が入ることで、個人的な責任感が生まれる
たとえばセミナー後に「今日学んだことをどのように実践されますか?この用紙に書いていただけますか?」と促すことで、実行への心理的コミットメントを高めることに繋がります。
また、心理的効果が高いのはデジタル署名よりも紙の上での手書きです。
<文字化・署名を効果的に実践するためのポイント>
・アクションプランや決意表明を紙に手書きさせる・商品・サービスの「活用計画」を記入してもらう
・期待される成果や目標を明確に書いてもらう
・日付を入れることで時間的なコミットメントを強化する
・可能であれば第三者の前で記入してもらう(公の場での表明効果)
一貫性を使う上での注意点
一貫性は自然に成約させる強力な行動心理学ですが、以下のケースでは逆効果となる可能性があるので注意が必要です。
強制や圧力を感じさせた場合
心理学では「リアクタンス」と呼ばれる現象があり、自由や選択肢が脅かされると感じると、人は反発して逆の行動を取りたくなります。
「今日中に決めてください」「これしか選択肢がありません」といった圧力を与えすぎると、返って購買意欲を下げる可能性を高めてしまうのです。
見込み客に対して、そのような圧力を与えないためのポイントとしては以下があります。
- 選択肢を常に提示し、断る権利も明示的に伝える
- 十分な検討時間を与える
- 押し売り感のある言葉遣いは避ける
イメージと提案内容が一致しない場合
高品質なコンサルティングを謳いながら、実際は使い回しの内容だったなど、場合によっては一貫性よりも、騙されたという感情が優先されることがあります。
たとえば「売上が3倍になる!」と謳っておきながら、実際は「理想的な条件下で最大3倍の可能性がある」程度の内容であった場合などです。
このように見込み客の反発を買うこともあり、一貫性が逆効果となるケースもあります。
評判の低下や返金要求などのリスクが下げるためにも、期待と実態のギャップが生まれないよう注意しましょう。
- 過剰な約束やアピールを避ける
- 具体的で検証可能な価値提案をする
- できることとできないことを明確にし、期待値をコントロールする
まとめ
今回のコラムでは一貫性について、お伝えしました。
一貫性は人間の根源的な心理に基づいた強力な心理学で、適切に活用することによって、押し売り感なく、「これは私に必要なものだ」と感じさせる流れを作ることができます。
一貫性の本質は、見込み客が自らの意思で、自然に購入を決断できるようなプロセス設計であり、売るテクニックというより買いたくなる環境作りでもあります。
ぜひ、今回お伝えした内容を実践いただき、あなたのセールスにおいて少しでも成約率が高まることができれば幸いです。
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最後までご覧頂き、ありがとうございました。